12月13日 鶴の舞


『鶴の舞』
この品種は、万年青に対してアンテナが一本も立っていなかった小さい頃の私でも聞いたことがあった程、獅子系の代表的な品種である。
命名者は奥谷三郎氏であり、誰よりも思い入れが深く、また正確にこの品種の来歴を分かっておられた方だと思うので、「続 原色おもと図鑑」より文章をそのまま引用させていただきます。

【性状】
濃紺緑の地に黄縞は鮮明で、厚い地合いが浮き地になった時は羅紗と見違えるほどになる。
にもかかわらず幅広の葉は角巻きに幾重にも巻き上がり、昇天の竜を思わせ、鶴の舞い上がる姿を彷彿とさせる。
甲竜、雅糸竜、鈴虫剣が出る。
加えて本種のすぐれていることは、鮮明の黄縞は、普通青白、いずれかに偏しやすく、往々栽培者を落胆させるものであるが、本種の縞はたいへん落ち着いていて、栽培経験者を安心させている。
また、繁殖よく、だれが培養してもそれ相当に作り栄えし、芸を十分に現わすばかりか、子さえ出して愛好者を得ている。海龍獅子など本種より芸は上と見られるものが存在している中で、縞獅子の美術展でよく本種が優勝することは、本種が栽培しやすく、よく本芸を十二分に発揮するからである。
筆者(三郎)は本芸を発揮しやすいことを、芸の一つと考えていて、その木のすぐれた点にあげている。本種はその類にはいる。これは命名者の「我田引水(がでんいんすい)」ではないと信じる。

【来歴】
呉市下黒瀬の内田富氏が戦前から培養増殖しておられたものを、33年氏の要請もあって、筆者が買い出して命名した。
はじめ内田氏は荷香獅子と命名しておられ、信仰家なのでこの名を愛されていたが、無信仰の筆者に荷香が蓮の香りであることなど知る由もなく、あえて自分の所感を押しつけてしまった。温厚な内田氏はすぐ諒承されたが、心の隅に残っている。
しかし今、鶴の舞が大勢に愛されていることを考えれば、この無理は幸いであったかもわからない。
この時、筆者が33本、亡弟の分として2本と、計35本を分けてもらった。鶴の舞はそれ以前、広島の多賀弘氏の交換会に1本出品された。また氏の手許に親木1本、ほかで5本を残したから、42本あったことになる。
それでいて、縞の派手なものは2本だけというのだから、いかに本種の縞が安定しているかうかがえると思う。


今日は温度管理システムなどを作ったSさんが来園され、すごい物を作って持ってきてくれました。
植え込み機(仮名S−1号)です。
振動で砂利を若干撹拌させながら落ち着かせるという便利ものです。
以前は、岡山県の実生家である松岡氏が違う形の植え込み機を作られていたのですが、現在は作られておらず作る人がいないので、新たに入手することが難しい時にこの機械が現れました。
このようにフットスイッチがついています。
強さは今のところ3段階あり、機械自体の大きさも2パターンあります。

試作品段階らしいのですが、3.0号鉢と3.8号鉢で植え込みを試してみたところ、しっかりと植え込み機の役目を果たしてくれていました。
これから耐久性や問題点、デザインなどを改良していく予定だそうです。
写真のサイズのものなら、持ち運びもしやすく、コンセントさえあれば色んなところで植え替えをできますね。
素晴らしい!

室内気温5−12℃
鉢内温度6−13℃
灌水なし。

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